コメント
「工程は、銅板を磨くところから始まります。磨き上げられたぴかぴかの銅板に向かい、これからの長い工程を思うと、わくわくします。
私は銅版を支配することができません。できないことによって、私が意識しない何かが産まれ始めます。
私の頭の中にだけ存在するはずの、奇妙な生き物や植物や街が、曖昧模糊とした世界が、銅版画という間接的な技法を通すことによって、確かに具現化してゆきます。
プレス機を回し、紙をそっと捲ると、私の空想の産物でしかなかった生き物が息づき始めます。私にしか感じないはずの、微かな風や音が、版画を通して、未知の誰かと共有できた時、自分の存在を認識することができます。とても幸せな仕事と思っています。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑2001』阿部出版より)
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