コメント
「梟は鳥の中で唯一目が顔の正面にある鳥である。首は左右に270度ずつ動き、超越した聴覚を有する。中国人は昔から梟を猫頭鷹とか、夜猫子と書き猫との共通点を早くから文字にしている。確かに顔がよく似ている。昨年から猫と梟のシリーズを始めた理由もそこにある。とはいえ私は梟が大好きである。群れることを嫌い、森の奥深くに身を隠し、大木に宿って擬態をしながら木の心で瞑想にふける。西洋では知恵の神と呼んで久しいが、悟りを開いた仙人と呼んだほうが似合っていると思う。梟がときとして人間に語りかける深い精神性は、賢者の安らかな顔を思わせるその表情によるに違いない。梟は人間と鳥の中間の生きものなのである。夜の森の賢者、梟は黒の技法―マニエール・ノワールによってこそその魅力が最大限に表わされるように思う。もともとマニエール・ノアウル(ふくろう)は、フクロウの技法なのだから。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑2000』阿部出版より)
略歴
- 1953年
- 山形県鶴岡市に生まれる
- 1976年
- 多摩美術大学絵画科日本画専攻卒業
- 1986年
- 第1回国際ミニチュア版画展(アメリカ)・グランプリ(91年第6回もグランプリ)
- 1987年
- ワークスオンペーパー展(アメリカ、88年も)・買上賞、ミヤコ版画賞展(大阪)・都賞
- 1989年
- カダケス国際ミニチュア版画展・グランプリ、中華民国国際版画ビエンナーレ・行政院文化建設主任委員長賞
- 1990年
- インタープリント国際版画展・名誉メダル大賞(ウクライナ)
- 1992年
- CWAJ版画家海外研修助成金受賞
- 1994年
- 国際蔵書票ビエンナーレ展・名誉メダル賞(ポーランド)
- 1995年
- 個展(Sasakawa平和財団USAギャラリー・ワシントンD.C.)
- 1997年
- クラコウ国際版画トリエンナーレ(ポーランド)
- 1999年
- 個展(田園の美術館・千葉県夷隅町)、20人の作家によるエングレービングビエンナーレ(招待、フランス)
- 2000年
- クラコウ国際版画トリエンナーレ(ポーランド)、国際蔵書票ビエンナーレ展(フランス)
- 2001年
- 第46回CWAJ現代版画展(東京アメリカンクラブ・神谷町)
作品紹介
《白福老滝図》
1999年 45.5×25.5cm
メゾチント