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世紀末の今、経済が停滞し人間不信と社会の飽和状態が、人々の心に閉塞感をもたらしています。ましてや、新しい世紀への期待感も持ち得ない時代ですが、それでも道端に生える雑草は逞しく成長を続けます。新芽は鮮やかな色彩で鋭く空に向かって成長し、新芽から伸びた葉は次第にその色を濃くします。
やがて枯れ、葉を落とした茎は、生長を続けるための幹に変わり新陳代謝・世代交代をスムーズに繰り返しています。自らの命を守るために、どんなに厳しい条件の中でも青々と茂る雑草は、私たちの環境に欠かせないものですが、時として邪魔な存在となることもあります。しかし、その姿をよく観察すると、人間の都合だけでないがしろにできない美しい姿を発見できます。
どんな条件下でもその状況に適応する道端の雑草は、新しい世紀へ向けての意欲と活力を私たちに注ぎ込んでくれるような気がします。そんな健気な雑草の姿を象徴的に描き出したいと考えています。
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑1999』阿部出版より)
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