コメント
「静かに晴れる日、正午を過ぎるとなんとなく日差しも落ち着いてきて、今日はこんな日だとその姿を語っている。熟れかかった午後2時の陽光は、今日一日の眺望を娯しませてくれる。始まりでもなく終わりでもない、はかない時がある。しばらく、夢想のきっかけをあたえてくれる。過去への憧憬か、無限を秘めた沈黙する過去への道がある。乾いた陽は、砂も石も土も白くしている。仄白い光につつまれて変わることなくずっと綴られてきたのだろう。長閑な時、平凡な一日に今日も在ったのだと証している。平和な一瞬だった。闇への予感を孕みながら、これで一日は終わった。あと何時間かすれば、空っぽの面影になってしまうだろう。殊にこの末枯れた10月の季節では。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑2000』阿部出版より)
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