コメント
「あらゆる版画技法のなかでも、ぼくは格別にドライポイントによる版画技法に深い関心を持っている。鉄筆で銅版に直接絵を刻みこんでいく行為はあまりにもシンプルゆえにとても厄介なシロモノだ。
昨今の多様に拡大された技法による版画の多くは、今日の人間のうすっぺらな知恵ばかりが透けて見える。また従来からある伝統的な版画技法にまとわりつくどこか文学的でペシミスティックな表情も好きではない。
銅版に直接傷をつけながら制作するドライポイントを始めてから30年になる、その多分に苦行僧的な仕事の手順から逃げだしたくなったときに、紙や布の上に水彩やアクリルで絵を描く。またその仕事に飽きたら、ニードルでギリギリした線刻でデクノボウに似た人や動物のかたちを描いたりしてきた。
絵はできるだけ無造作に描かれたものがいい、風に揺れながら気軽に壁にピンナップされている落書きのような仕事が最高だ。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑1999』阿部出版より)
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