コメント
「人間ばかり描いているくせに、なかなか顔を覚えることができない。初対面の人は皆、のっぺらぼうで、きっと私ものっぺらぼうなのだろう。関わりを続けるうちにのっぺらぼうの膜の中から浮かび上がった顔を浸み込ませてゆく。そんなときは私の顔も相手に浸み込んでゆくと感じる、情況や心の襞の中を流動し浮かんでは消える 一人の中の多くの顔、そのひとつでも捕まえられたら相手の存在は私の中で息づき始める、5年前からanonymous(匿名)という連作をつくり始めた。様々な年令、性別、人種の顔を記録的に版に写してみること、間接的に知りえた顔、深く関わった顔、50の顔を描こうと決めた。今は私の生の時間の流れる分だけ続けたいと思っている。1人の中の無数の顔と、無数の人々の中のただ1人の顔を描くために。」(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑2000』阿部出版より)
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