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「猫の絵を頼まれた。筋向かいの家が猫好きなので、たくさんの飼い猫や野良猫がゴロゴロウロウロしている。向かいの家の物置の屋根で毛繕いしたり、道路に寝そべって日向ぼっこをしたり、わが家の庭で喧嘩したりする。
どんな絵にするか。黒と白の効果を狙って黒猫と白布の組み合わせを考えた。まずほっそりして器量の良いシャムっぽいのに白羽の矢を立てた。下図でいろいろひねってみたが猫のおさまりが悪い。猫が細いから黒の面積が不足して面白くない。太猫モデルには事欠かないからどんどん太らせていった。シャムがペルシャ風に変わって器量まで妙ちきりんになってしまった。額縁屋の親父は、うちの猫にそっくりですよとニコニコしたが、どうも注文主のオバサンの顔にそっくりになった。
知ってか知らずか、オバサンはでき上がった絵を喜んで持って帰った。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑1999』阿部出版より)
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