コメント
「メゾチント技法にこだわって制作しているのは、この技法が闇から光を削り出すというコンセプトを内包しているものだからである。はじめに銅版の表面全体にベルソーで無数の小さなささくれだった<きず>をつける、この版にインクをつめ、刷り上げると深い闇のような黒面ができる。ビロードの黒ともいわれる。作画はこのささくれだった<きず>をスクレッパーで削りとって形象を浮び上らせる。削りの度合によって黒からハイライトまでの階調をつくり出す。
闇の中から光を受けてものたちが浮び上ってくる。そこに出現するものたちの美しさとおどろき。ものの存在の畏れのようなものを表現したり、光と闇、現実と虚構、表と裏、表面と内実──この間の距離を測るものとして私にはメゾチントがあるように思う。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑1999』阿部出版より)
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