コメント
「近くを流れる荒川の河原に時々行きます。去年の枯れた草の間から今年の葉が伸びて、ほとんど変化のない風景の中で時間だけが無機的に進んでゆくようです。そんな足元の風景を眺めながら散歩していると、同じ風景をずっと前に見たことがあるような気がすると同時に記憶の彼方に行ってしまったことが急によみがえってきたり...。
感情を抑え、乾いた、無機的な感覚を表わすのに、銅版という硬質な素材にイメージを置く方法は、気に入っています。ひびの入った壁は古代遺跡の一部、風化した古文書の1ページ、さらに時を経て崩れてゆく現代文明の一断面、たくさんのます目は無常な時間の集積、あるいは無数の文字の配列、高層ビルの窓であるかもしれません。現代という時間も果てのない時の流れの一部、そこに生きる人間はさらにその一部です。」
(作家コメント「遠い風景、近い風景」『版画年鑑2000』阿部出版より)
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