コメント
「私の絵づくりは、ことばを媒介としたイメージの抒情性の表現であり、詩の本源は傷心にあり、詩の王道は抒情にありと気づいた。そして抒情や傷心にも食傷ぎみの昨今、画面も饒舌すぎ喧しく感じだした。ドラマや物語りはもはや必要ではなく、ものそのもの、存在そのものが現出してこなければならない。
マニエール・ノワールを制作中の私は銅版に向い瞑目する。すると漆黒の彼方から、白く朧げなものが徐々に浮かび上ってくる。無数の羽根のようなものが、画面の中を緩やかに漂いながら舞うように飛翔するかとも見紛う。その一瞬、形をくっきりと現したかと思うと、私の脳裡に鮮明にそのイメージを焼きつけ、今度は徐々に拡散しそのスピードを速めながら、再び暗黒の世界に溶け込んでゆく......。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑2000』阿部出版より)
略歴
- 1951年
- 大阪市に生まれる
- 1977年
- 銅版画集『夢魂』出版
- 1978年
- 第1回版画ハガキコンクール・優秀賞
- 1980年
- 個展(ダビッドソンギャラリー・シアトル)
- 1981年
- トレントユーモアビエンナーレ(トレント)・入賞
- 1989-90年
- 現代日本版画展(オークランドミュージアム、ニュージーランド・アカデミーオブファインアーツ、ウェストパックギャラリー、ビクトリアンアートセンター)
- 1989年
- 個展(ホールワースギャラリー・シドニー)
- 1992年
- 本の宇宙(栃木県立美術館)、中島敦展「一閃の光芒」(神奈川近代文学館)
- 1994年
- インドネシア展(ジョグジャ、ジャカルタ、バンドン)
- 1995年
- 泉鏡花展「水の迷宮」(神奈川近代文学館・横浜)
- 1995-98年
- 『梅木英治日本幻想文学集成版画集』第1・2・3集刊行
- 1998年
- 個展(青木画廊・銀座)
- 1999年
- 種村季弘「奇想の展覧会」(中京大学Cスクエア)
作品紹介
《メカニックな夜》
1996年 17.7×22.8cm
メゾチント