コメント
隣家が一軒きりの山の中に生まれ、遊びの場所は山や川、少年の頃皆そうだったように食べることだけに精一杯の家で、子供も貴重な労働力、親に言いつけられた仕事のノルマを片付けると後は山や川を走り回り遊びほうけていた。戦争の疎開で土地のない我が家は山奥の畑を借り、さつまいもや麦を作っていた。そうした山奥の畑仕事はもっぱら子供たちの仕事。2つ上の姉と弁当を持って出かけ、子供心にも決して楽しいとは思えない仕事を片付けると、家まで小一時間の山道の帰りは楽しかった。夕陽を受けきらきら輝く緋色に染まった木の葉、地面に張り付くような雑草のかそけき存在。夜道、杉木立が覆い被さる小道を怖さから駆け抜け、仰ぎ見た樹間の星空の美しさ。古い記憶の化石を掘り出すかのような制作。
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑2001』阿部出版より)
略歴
- 1948年
- 長野県に生まれる
- 独学で版画を始め、銅版画家・中林忠良氏に私淑する
- 1989年
- 第57回日本版画協会展・準会員賞
- 第4回ニューヨーク国際ミニアチュールプリントビエンナーレ受賞
- 第1回バラトヴァバン国際版画ビエンナーレ・特別賞
- 第15回日仏現代美術展・佳作賞(90年フランスソワール賞2席、フィガロ賞3席)
- 第9回フレッヘン国際版画ビエンナーレ・作品買上
- 1991年
- アトリエコントルポワン(パリ)に留学し、1版多色刷り銅版画を学ぶ
- 1995年
- パシフィックリム国際版画展・ハワイ州教育・芸術財団買上賞(97、2000年も)
- 1997年
- 文化庁在外研修員としてアトリエコントルポワンに留学
- 1998年
- 第3回フィンランド国際ミニプリント展・特別賞
- 2000年
- 第20回カダケスミニプリント展・受賞。翌年審査員を務める
- 2008年
- ニュージーランドパシフィックリム国際版画展・審査員特別賞
- 2009年
- ソウル空間国際版画ビエンナーレ・買上賞
- スプリット国際グラフィックアートビエンナーレ・特別賞(クロアチア)
- 2011年
- CWAJ現代日本版画展・第1回運営委員会賞
- モロッコのアートフェスティバルに招聘され滞在制作を行う