コメント
「銅版エングレーヴィングの醍醐味は、刀(ビュラン)と銅板の拮抗感にあります。精神を集中させ、明確な意識と強い意志を持って、自分の求めるありとあらゆる線と点を掘り進めて行く作業は、苦行僧のようですが、忍耐強く制作を続けていると、ある瞬間時間が止まり至福の波が打ち寄せて来ることがあります。これが実にいいのです。そして、彫版された時間の集積が紙の上に立ち現われたとき、この限りなく平面に近いレリーフは、正しく彫刻銅版画であると実感します。闇をしつらえた木口木版に光を彫り当てる作業は、何百年と生きた木の温もりと厳しさを感じながら制作するのですが、銅版も木口も指先に常に材質感を伴う喜びを楽しみながら制作しています。」
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑1999』阿部出版より)
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