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『転位―地』のシリーズは『Position―腐蝕』シリーズとともに、ここ15年ほど取り組んでいる仕事である。はじめは社会や環境への自身の浮遊感を埋めるべく、足元の〈地〉を見直すという仕事であったが、しだいに白と黒に代表される二律背反の拮抗と調和を、腐蝕銅版画の工程・技法(しくみ)にからめて描くようにもなった。
75年に出会った金子光晴の詩片『すべて腐らないものはない』で顕わになった世界観がその背景にある。
(作家コメント「わたしのかたち」『版画年鑑1999』阿部出版より)
略歴
- 1937年
- 東京に生まれる
- 1961年
- 3年次に駒井哲郎から初めて銅版画を学ぶ
- 1963年
- 東京芸術大学美術学部油画専攻卒業
- 1965年
- 東京芸術大学大学院版画専攻修了
- 1973年
- 日動版画グランプリ展・グランプリ
- 1975年
- 文部省派遣在外研究員としてパリ国立美術学校、ハンブルク造形芸術大学にて研修
- 1982年
- 第14回日本国際美術展・和歌山県立近代美術館賞
- 1983年
- 第1回中華民国国際版画ビエンナーレ・国際大賞
- 1984年
- 第7回東ドイツ国際版画トリエンナーレ・インターグラフィック賞
- 1985年
- 第2回山口源大賞受賞
- 1986年
- 第11回クラコウ国際版画ビエンナーレ・優秀賞
- 第5回ソウル国際版画ビエンナーレ・国際大賞
- 1987年
- 第4回ヴァルナ国際版画ビエンナーレ・銀賞
- 1989年
- 東京芸術大学教授(~2005年)、現在東京芸術大学名誉教授
- 2003年
- 紫綬褒章受章
- 2014年
- 瑞宝中綬章受章
- 2016年
- 「中林忠良展 未知なる航海―腐蝕の海へ」(CCGA現代グラフィックアートセンター・福島)